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『大和名所図会』今昔めぐり ③春日若宮祭禮

江戸時代の作家・秋里籬島と絵師・竹原春朝斎が奈良を訪れ、183点の絵と紀行文をまとめ、寛政3年(1791年)に刊行した『大和名所図会』。奈良県内各地の風景や社寺境内の鳥瞰図、自然や旧跡、年中行事や名産・習俗・伝承などが掲載され、奈良の魅力が盛りだくさんに紹介されています。江戸時代の作家と絵師が見た奈良の名所風景をたどり、追体験を楽しめるスポットを紹介していきます。
【参考】『大日本名所図会 第1輯 第3編 大和名所図会』(大正8年)(国立国会図書館)
2枚目 写真提供:奈良市観光協会

3.春日若宮祭禮(巻之一)(関連スポット:春日大社)

 

春日大社の重要な祭礼のひとつに「春日若宮おん祭」があります。その始まりは平安時代後期、保延2年(1136年)です。当時、大雨洪水、飢饉、疫病蔓延などが世を暗く覆っていました。時の関白・藤原忠通は、藤原氏の氏神である春日大社の摂社・若宮神社の霊威にすがり、人々も春日野に御神霊をお迎えして、万民救済や五穀豊穣を祈りました。

 

『大和名所図会』には御祭(おんまつり)に関わる絵が2点描かれています。御湯立(みゆたて)を行う巫女らを描いた「霜月二六日 御祭掛鳥」(挿図題)と、大勢の見物人に見守られながら御旅所に向かって渡御の列が行く様を描いた「春日若宮祭禮」(挿図題)です。

 

おん祭の中心神事は現在12月15日~18日に開催されます。15日に御湯立や大宿所祭など、16日に宵宮祭など、17日に遷幸の儀やお渡り式、お旅所祭、還幸の儀など、18日に奉納相撲や後宴能が行われます。

 

なかでも「遷幸の儀」は若宮神を本殿からお旅所へとお遷しする行事で、浄化された闇をつくるために、参道では一切の火・光が禁じられます(撮影もできません)。神官らが十重二十重に神霊を取り囲み、「ウォー、ウォー」と声を出しながら、ゆっくりとお旅所へ向かう情景は、神秘そのもの。見学の際は無光・無音でお願いします。

 

その後、同日に行われるお渡り式は、日使・神子・細男相撲・猿楽・田楽・馬長児・競馬・流鏑馬・将馬・野太刀・大和士・大名行列など、古式ゆかしい衣装をまとった風流な行列が見ものです。

 

大和の伝統行事「春日若宮おん祭」の解説記事はこちら
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