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◎寒いからこそ美しい、奈良の冬絶景10選

キンキンに冷える奈良の冬。だからと言って出不精ではもったいない。寒いからこそ見られる特別な景色があります。観光で訪れる人も、近隣府県の人も、透明感のある奈良の冬を楽しんでください。きっと、寒いけれど来てみてよかった~と思えるシーンに出会えますよ。

最初に奈良市内のポイントを3つ紹介します。どれも近鉄奈良駅かJR奈良駅から徒歩圏内なので、気軽に訪れることができます。

 

 

【奈良公園 飛火野の冬の朝】

 

まずは奈良公園。エリアは広いですが、春日大社境内の「飛火野」に行ってみましょう。冬枯れした芝生が広がっています。周辺の広葉樹もすでに落葉し、あたりの風景はどことなく無機質で寂しげです。しかし、今日は晴れるぞという日の夜明け頃、そんな風景が表情を変えます。
朝焼けに染まり始める東の空。白くにじみ出す中天の空。まだ夜が居座る西の空。一日の始まりを告げる太陽と空のグラデーションSHOWの開幕です。分秒ごとに色が変化し、赤や紫から紺や青へ、そして気がつくと、夜は去り、白くて明るい朝が飛火野を照らします。
そんな空の色。森の中で目覚め、ちらほらと飛火野に出てくる鹿たちも、微妙に移ろう空を見上げています。

 

<アクセス>
近鉄奈良駅から「飛火野」まで、徒歩約18分(約1.5㎞)

 

 

【雪景色の浮見堂と鹿】

 

飛火野から道路を挟んですぐ西側にある鷺池に浮かぶ「浮見堂」も絶景ポイントのひとつ。たくさんの観光客が水面上にあるお堂を見たり、散策途中に立ち寄ったりする浮見堂ですが、普段は特に絶景と呼べるほどではありません。
絶景を狙いたいのは、前日から雪が降り続いている場合や、朝目が覚めて外を見ると銀世界だったという場合。そんなときは張り切って浮見堂に行ってみましょう。
雪の中に浮かぶお堂、それだけでも寒さを耐えて見にいく価値がありますが、私たち人間と同じように、積雪にちょっと驚いている感じの鹿たちが池のほとりに佇んでいると幸運です。それだけで浮世絵か何か、名画の中のようなシーンになります。

 

<アクセス>
近鉄奈良駅から「浮見堂」まで、徒歩約17分(約1.4㎞)

 

 

【冬の奈良大和路キャンペーン「鹿寄せ」】

 

奈良公園の風物詩として知られている「鹿寄せ」です。これは絶景であり、あるいは「珍景」と言えるかもしれません。
奈良公園(飛火野)でナチュラルホルンを奏でると、アラ不思議、春日大社の森の中から鹿たちがぞろぞろと駆け出してきます。これは、音色を聞いて駆けつけると、どんぐりなどのごちそうがもらえるから。
駆け寄ってくる表情には、「ごはんがもらえるぞ」「早く行かなきゃ」「おいしいどんぐりをもらえるかな」「今日は何個食べられるかな」など、さまざまな感情が見て取れて、愛嬌たっぷり。特に雪が積もった日の鹿寄せでは、鹿の吐く息も白く、寒くて子鹿が母鹿にぴったりとくっついていたり、愛らしい仕草が見られます。

2024年の開催は、1月6日(土)~2月25日(日)の土・日曜日・祝日(※1月27日(土)、28日(日)は除く)の午前10時からです。この期間中に雪が降れば、ぜひ。

 

<アクセス>
近鉄奈良駅から「飛火野」まで、徒歩約18分(約1.5㎞)

次は、古社古刹の冬景色。シンと静まり返った境内。誰の足跡もついていない雪。心洗われる絶景時間を過ごすことができます。

 

 

【雪をかぶった談山神社の十三重塔】

 

大化の改新の発端となった中大兄皇子と藤原鎌足の話し合い(談合)が行われた舞台に建つのが談山神社です。深い山に抱かれた境内は、紅葉の名所として名高く、紅葉に映える十三重塔は特に人気のシーンです。
雪が降る季節、紅葉の名所はどうなるのでしょうか? もちろん紅葉は終わり、静かな白い世界が広がります。その“今”のシーンだけでなく、紅葉から雪、すなわち、赤から白への移り変わりを想像してみてください。自然が織りなす紅白の舞台転換に感嘆します。

 

<アクセス>
西名阪道天理ICから約19㎞/駐車場あり(普通車無料)

 

 

【雪の境内を見渡せる壷阪寺】

 

眼病封じや西国霊場として知られる壷阪寺。多くの建物を有する境内では、いずれもインド招来の天竺渡来大観音石像(全長20m)、天竺渡来大涅槃石像(全長8m)、天竺渡来大釈迦如来石像(全長15m※台座含む)、禮堂(室町時代再建)、八角円堂(江戸時代再建)などが目を引きます。
山の斜面に広がる伽藍なので、見晴らし良好。雪の日は足元に気を付けながら、高所から望むと、ため息が出そうな光景を見渡せます。

 

<アクセス>
近鉄壺阪山駅から車で約9分(約4.1㎞)

 

 

【雪景色に朱色が映える室生寺五重塔】

 

女人禁制だった高野山に対し、女性の参詣も許されていたことから「女人高野」と称される室生寺。山中に建ちますが、仁王門から鎧坂、金堂、本堂、五重塔など、大きな存在感を放つ建物が並びます。
シャクナゲの花や紅葉も見ものですが、ひとり静かにお参りしたいときは、ぜひ冬の一日を選んでみてください。雪に染まる鎧坂に始まり、本尊釈迦如来立像、十一面観音立像、文殊菩薩立像、薬師如来立像、地蔵菩薩立像、十二神将立像が壮観に並び立つ金堂、さらに石段を上ったところに建つ五重塔が見ものです。
五重塔は屋外にあるものとしては法隆寺の五重塔に次いで古いもの。1998年には台風被害に遭いましたが根幹部は損傷を免れました。雪があれば白の世界、雪がなくても冬の鈍い色の中、訪れる価値のある五重塔の鮮やかさです。

 

<アクセス>
近鉄室生口大野駅からバス利用(約6.8㎞)

 

 

【雪除けのこもをかぶった長谷寺冬ボタン】

 

威風を放つ仁王門から、長谷寺名物とも言える399段の登廊をのぼってたどり着く舞台造りの本堂(国宝)。本尊十一面観世音菩薩立像を安置しています。像高10mを超える、堂々たる木造の仏さまで、特別公開時にはその御足に触れることができます。
長谷寺は古くから「花の御寺」として親しまれ、山桜、シャクナゲ、あじさい、紅葉、ボタンなどが境内の四季を彩ります。
一般に花が少なくなる冬期は、冬のボタンが見ごろです。それも雪除けの“こも”をかぶった愛らしい姿が見られるとあって、雪の日も足を運ぶ人が少なくありません。ボタンが咲く登廊周辺から本堂を見上げる景色は、奈良の冬を代表するワンシーンです。

 

<アクセス>
近鉄長谷寺駅から徒歩約18分(約1.3㎞)

 

最後に、冬山で見られる自然現象がつくる絶景を紹介します。

 

【高見山の霧氷】

写真:矢野建彦

 

 

【三峰山の霧氷】

 

 

【大峯山の霧氷】

写真:矢野建彦

 

氷点下の厳しい環境で、冷やされすぎた霧や水蒸気の昇華によって樹木に着氷する「霧氷」です。白色や半透明の氷の結晶が顕著に観察でき、幻想的かつ神秘的な絶景を作り出します。

 

奈良県では、東吉野村の“近畿のマッターホルン”こと高見山(標高1249m)や、御杖村の三峰山(標高1235m)で見られる霧氷がよく知られています。実際に霧氷を見るには「気軽に」とは言えませんが、冬の青空の下で見る、自然がデザインした氷の芸術は一生モノの絶景になるでしょう。

 

お出かけには、奈良交通の「霧氷バス」が頼りになります。高見山(近鉄榛原駅発着)、三峰山(同)、天川村観音峰登山口・洞川温泉(近鉄大和八木駅など)へ、例年1月中旬から2月下旬の土日祝日に運行されています。

 

※冬の登山は危険を伴います。専用の装備、専門の知識、相応の技術を備え、天候を十分に考慮してお出かけください。
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