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『大和名所図会』今昔めぐり ①春日野の若菜の摺衣

江戸時代の作家・秋里籬島と絵師・竹原春朝斎が奈良を訪れ、183点の絵と紀行文をまとめ、寛政3年(1791年)に刊行した『大和名所図会』。奈良県内各地の風景や社寺境内の鳥瞰図、自然や旧跡、年中行事や名産・習俗・伝承などが掲載され、奈良の魅力が盛りだくさんに紹介されています。江戸時代の作家と絵師が見た奈良の名所風景をたどり、追体験を楽しめるスポットを紹介していきます。
【参考】『大日本名所図会 第1輯 第3編 大和名所図会』(大正8年)(国立国会図書館)

1.春日野の若菜の摺衣(巻之一)(関連スポット:不退寺)

 

主人公の恋愛を中心に描かれた、平安時代の『伊勢物語』の冒頭シーンとして知られる場面です。絵の左上に、在原業平の歌「春日ののわか紫のすり衣忍ぶのみだれかぎりしられず」が添えられています。

 

屋敷にいる女性。柵越しに覗き見て、熱く視線を送る業平。右上には野や川に遊ぶ鹿が5頭。昼ドラのような恋愛劇が始まりそうな雰囲気。春日野で見た美しい女性に心乱れる業平なのでした。

 

業平は大和名所図会にもう一度登場します。同じ巻之一の「在原業平二條后故事」です。女性をとりこにした業平が、春日野で武装した追手2人(女性の関係者でしょうか?)に迫られる場面を描いています。業平は逃げ切れたのか、どうか。それにしても、業平、モテモテです。

 

在原業平は平安時代初期~前期の貴族・歌人。平城天皇の孫にあたり、『伊勢物語』の主人公とされています。また、六歌仙(『古今和歌集』に記された代表的な6人の歌人)、三十六歌仙(平安時代の和歌の名人)にも“選出”されています。

 

奈良市の不退寺は、平城天皇が譲位した後に隠棲した御所跡に業平が創建したと伝わる、業平ゆかりの古刹。本尊の聖観世音菩薩は業平の作といわれ、業平観音とも呼ばれています。境内では花々や紅葉が四季を彩り、「南都花の古寺」として親しまれています。

 

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