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奈良の昭和遺産③「旧日本陸軍 屯鶴峯地下壕」(昭和19年)

旧陸軍によって構想された秘密の地下壕があった。

屯鶴峯は「どんづるぼう」と読みます。奇妙な地名です。

 

フタコブラクダの背のように頂が連なる二上山。その麓の台地に火山灰起源の白い岩層が地表に露出した地形があり、その白と樹木が点在する風景が、森林にたたずむツルにたとえられ、「ツルが屯(たむ)ろする峯」という意味でこの名があります。

 

今では、白い岩層帯は格好の散策スポットですが、太平洋戦争の末期、ここにも戦争の影が忍び寄りました。当時の陸軍によって、延長2㎞に及ぶ網の目状の地下壕の建設が構想されたのです。

 

トンネルを掘る専門部隊が約300人態勢で1日24時間、約2ヶ月、えっさえっさと掘り続けました。しかし、予定していた航空総軍戦闘指令所などの軍事施設が完成する前に終戦を迎えました。

 

もしこの地下壕が終戦前に軍事使用されていれば、米軍による空襲の標的になったかもしれません。今はひっそりと山中にたたずむ「昭和遺産」ですが、日本が戦争に突き進んだ時代があったことを忘れてはならない、そう言い伝えていくための遺産だと言えます。

 

屯鶴峯の景勝地から山道を約30分歩くと地下壕に着きます。特に整備されていませんので、見学は無理のないようにしてください。
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